犯罪からの子どもの安全、子どもを守る防犯ボランティア「スキルアップ教材」 防犯教材

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インタビューの記録

No.2広島県健康福祉センター

【インタビュー協力者】
・石恵理子さん《民生児童委員》

石恵理子さん

「子ども見守り活動について」

石恵理子さん

地域の見守り活動をされているそうですが、そのきっかけを教えてください。

石さん:活動以前から、子どもたちの登下校時は誰かが見ていたほうがいいと思っていました。そんな時、木下あいりちゃんという小学校1年生の女の子が下校時に殺害されるという事件が起きて、その気持ちが強くなったのです。ちょうど、地域の交番のおまわりさんも見回りをしてくださる方だったので、地域の元気なお年寄りに子どもたちを見ていただけないかと相談をしたんです。事件の直後でしたね。

その時のお年寄りの反応はどのようなものでしたか?

石さん:とても元気なお年寄りで毎日ゴルフをされていたため、その時間を削ってもらわなければいけない状況でした。すぐに返事が返ってくるとは思っていなかったのでしたが、おまわりさんと一緒にお伺いしたら、「立てる人がいたら、とりあえず明日から立ってみよう」とすぐにおっしゃってくれました。それが現在まで続いているのです。

実際に立つ方法等はあるのでしょうか?

石さん:保護者の立場だと、こんなところに誰かがいてくれたら、と思うことがあるのですが、子どもさんからしばらく遠ざかっていたご年配の方の中には、そういった感覚がよくわからないということもあり、何ヶ月かに一度集まってお話をしました。

お年寄りの方に集まってもらい、立ってほしい場所等を相談していたのですね?

石さん:町内の地図を描いて、「子どもたちがこういうところに住んでいるんですけど」と説明すると、「じゃあ、ここに一人いればいいね」とか「もう一人こっちに立とうかね」と意見が出て、段々に形が出来ていきました。配置は、近くに住んでいる方に無理のない形で決めていきました。

毎日ゴルフをしていらっしゃる方のように、何かをしながらでも良いのでしょうか?

石さん:近所の方とお話をしながら、植木にお水をやりながら、お散歩をしながらという形でも、いいと思います。

日常の生活を崩さない形で、出来る範囲で活動する?

石さん:当番制にはしていないので出られるときで結構ですよとお伝えしておりますが、ゴルフの練習中も当番を決めて出てくださっているようです。

立つ場所などで意見の食い違いなどはありませんか?

石さん:ありますね。そういう場合には、「子どもが一人になってしまうので、姿を見送ってあげられるよう、こちらにいていただきたいのですが」というお話をしています。

どのくらいの規模で始まったのでしょうか?

石さん:私の町内では、ゴルフをされている元気なお年寄りの方、20名くらいだったと思います。学校安全ガードボランティアというものが各学校に立ち上がり、そこに登録する形になりましたので、各学校単位にすると100人くらいはいらっしゃると思います。

活動が広がるにつれて困った点、悩まれた点はありますか?

石さん:ボランティアは一生懸命、地域で子どもたちが帰ってくるのを見守っています。頑張っている分「PTAはどうしているの?」とか「学校は何知らん顔しているの?」という不満はありましたね。

どのような対策を行ったのでしょうか?

石さん:学校の先生やPTAの方、子ども会のお母さん方にも来ていただいたりして、交流会、勉強会を兼ねた集まりを何カ月かに一度行いました。お互いに意見を言える機会を通して、随分と結びつきが強くなった気がします。

今後の課題、こうなったら良いのではないかと思うことはありますか?

石さん:見守り活動は、しばらく大きな事件がなかったり、普通に平和でいると、ついつい忘れがちになってしまう。どこかで何かが起こる前に、防犯教室で危険回避能力を身につけてくれたらなと思っています。危ない場所という判断を、地域安全マップを作ることで危ない場所が判断できるようになったり、知らない人だけど、怖い人じゃなくていつも挨拶してくれるおじちゃんだとか、自分で判断してもらえるようになってほしいですね。そのお手伝いが出来ればいいのですが、なかなか難しいですね。

どのように難しいのでしょうか?

石さん:そうですね、ボランティアというのは属している部分があります。そこから、こういう風にしてくださいねと言われた時、半分は違う意見を持っていても、マニュアル通りに行わなければならない場合があることです。

葛藤を抱えながらやっているということですね。

石さん:葛藤があっても活動しなければ伝わりませんので、仲間と葛藤を抑えたり話し合ったりしています。一人では絶対に出来ませんね。

自作の寸劇のシナリオ

「子ども向け防犯教室について」

自作の寸劇のシナリオ

活動内容を教えてください。

石さん:各小学校、児童館、最近では幼稚園からの依頼もあります。依頼を受けてその場所に向かい、1時間ぐらいいただき子どもたちに被害にあわない方法、または非行に走らないお話をしています。

どのように教えているのですか?テキスト等はありますか?

石さん:テキストはありません。教室や体育館に集まっていただいて、12分程の寸劇をします。子どもたちが学校の帰りに寄り道をしてしまい、公園でたまたま一人でいるところを知らない人に声をかけられてしまう。そして連れて行かれそうになる。そこで防犯ブザーを鳴らすと友達が駆けつけてくれて、110番の家に逃げ込むという内容です。

その劇の中で大事なポイントはどのように教えているのでしょう?

石さん:おまわりさんが不審者を確保して、署に連れ帰ってくれる形で劇が終わった後、5分くらいリプレイの時間を設けています。そこで、こんな時は離れて立つ、誘われたらこのように断る、といった回避方法を演じて、一回やってみようねという形で教えています。

 

劇が役に立ったというお話はありますか?

石さん:子どもたちがすぐに対応できましたというお話は、中央署を通じて聞いています。小学校に行ったとき、防犯教室の帰りにバス停で一人で待っていた女の子に不審者が声をかけたそうなのですが、女の子が「今日教室で見たお話だ」とすぐに対応ができたそうです。防犯ブザーを鳴らして離れて立っていたことで、すぐに逃げることができ、学校の先生に通報できた、ということを聞き、一生懸命やっていると伝わるものがあるんだな、と思いました。

防犯講習にあたって、研修を受けたり劇を見に行ったりされたのですか?

石さん:意識が低いと子どもたちにも伝わらないということもあります。各共助員の単位があるのですが、その単位で劇をするならば劇をやっている方に来ていただいて立つ位置、前を向いて手振りをつけるといいなど、劇の指導を受けました。

実際に劇を見せて講師の方に指導していただいたのですね?

石さん:普通の防犯教室のときは、演じていない人が向かいに立ち「もっと声を大きく」「おしりを向けてはダメ」と注意し合っています。

防犯教室がこれからどのようになったらいいと思いますか?

石さん:我々は共助員として、中央警察の下でボランティアをしているという難しい枠があります。そのため私の思いとはまた違うやり方があり葛藤もありますが、知らない人や不審者、危ない場所から子どもたちが自分で自分を守れる力を身につけられる防犯教室にしたいなと思います。